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一方、予定利率を上回る運用収益を(広義の自己資本であるソルベンシー・マージンの充実などに充てる部分を除き)契約者配当として還元し、実質的に低廉な保険料での保険給付を可能にすることが求められる点。
生命保険会社は(有配当保険については)この予定利率を上回る運用収益からの配当(「利差配当」) 以外に、予定事業費(率)と実際事業費(率)の差による費差益からの配当(「費差配当」)および予定死亡率と実際死亡率の差による死差益からの配当(「死差配当」)を契約者配当として行っている。
これを、会社の利益(相互会社の場合、営利法人ではなく中間法人であるので、「利益」といわずに「剰余」ないし「剰余金」という)を構成する利差益、死差益、費差益という源泉別に各契約の貢献度を測定してなされるという意味で「利源式配当」と呼んでいる。
新保険業法は、決算期には保険料積立金の計算を保険料計算の基礎によらず、標準責任準備金方式を採用している。
・剰余金の源泉には、この他、解約益(解約契約の「保険料樹立金一解約返戻金」)がある。
なお、近年は利差損が発生している契約もあり、その場合は費差益配当、死差益配当分で相殺した配当(相殺し切れないときはゼロ)になる。
・特別配当やアセット・シェア配当では、キャピタル・ゲインも含めて、貢献度に応じて自己当される。
ただ、従来は、運用収益といっても、貸付金や債券の利息や株式などの配当金収入(インカムゲイン)を指し、資産の売却益などのキャピタル・ゲインは、原則として準備金(86条準備金)として積み立でなければならず、責任準備金の積み増しや契約者配当の財源にはできないこととされていた。
契約者配当の財源としては、僅かに大蔵大臣の認可を得て、一定期間以上の長期継続契約の消滅時に特別配当の財源にすることが認められていただけである(消滅時特別配当の対象契約は、導入時の1972年以降、10年以上経過した契約とされてきたが、バブル崩壊後はこの年数は延ばされる傾向にある)。
なお、96年4月に施行された新保険業法はこの点を改め、毎年の通常配当についても契約の貢献度に応じてキャピタル・ゲインを還元できるアセット・シェア方式も認めたが、詳細は後述する。
なお、解約価額(返戻金)を保証するということは、貯蓄保険料を予定利率で利殖したその時々の責任準備金(解約返戻金)を約定価額で買い取る権利を付与するプット・オプションの売り持ちをしていると考えることができる。
対価としてのオプション・プレミアムは明示的には徴収されないが、解約時の解約控除が一応それに対応していると見ることができる。
(注1) 厳密には保険金額や解約返戻金額を保証しているのであって、銀行預金のように直接金利を保証するものではないが、保険金の支払いや実際の経費が保険料計算上の死亡率と事業費率どおりの実績であった場合、解約控除額を除外すれば、予定利子を付さない限り保険金額などの保証はできないので、その意味では予定利率を保証しているということができよう。
生命保険会社は資産運用に当たって、このような責任準備金の性格に留意し、安全性と収益性のバランスを重視しなければならないが、そのためには責任準備金をその源泉である保険商品の種類ごとに区分経理し、その性格(長期・短期別、それぞれの保険契約の性格など)に応じて運用することが求められる。
とりわけ、貯蓄的性格の強い企業年金については、区分経理による資産ポートフォリオを構成する各資産ごとの期待収益率とリスク(標準偏差)から、資産全体の収益率が保証利率を下回る縮率を計算し、必要な内部留保(予定率を下回る場合に備えたバッファー)を確保しつつ安定的な配当がなしうるよう適切な財務管理が必要になっているが、詳細は後述する。
生命保険会社の会計は、生命保険業務が前述の保険数理にもとづく業務であること、ならびに相互会社が中心であることを反映して一般企業のそれとはかなり異なった特徴を持っているここでは、相互会社会計を中心にそのポイントのみを簡単に述べる。
生命保険会計の最大の特徴は、毎年度の損益計算書上、収入保険料のうち、貯蓄保険料と予定利息を、保険数理的な手法によって責任準備金繰入額として費用計上することである(ただし、新保険業法は、前述のように、保険料計算基礎率とは別の計算基礎率による標準責任準備金を積み立てることを原則としているので、今後は過去法の責任準備金とは必ずしも一致しない)。
また、収益としての保険料収入は、保険料債務が保険契約者の意思に委ねられている(「自然債務」といわれる)ことから、現金主義により、未収保険料は計上されない。
資産の評価は、取引所の相場のある株式は低価法、国債などは償却原価法が原別である。
ただし、旧保険業法84条(新保険業法112条)により、取引所の相場のある株式については、大蔵大臣の認可により時価までの評価益計上が認められる(責任準備金または社員配当準備金への繰入が条件)。
また、純キャピタル・ゲインは、旧保険業法上は貸借対照表上86条準備金として積み立てる(取り崩し時には戻入する)ことが原則とされていたが、新保険業法はこれを改め、価格変動準備金に衣替えした(詳細は後述)。
計上された当期剰余は、任意積立金の取崩額とあわせて、未処分剰余金として社員総代会の決議により、その大部分は社員配当準備金に繰り入れられる(この社員配当準備金は、貸借対照表の負債の部に計上される)。
バブル経済が崩壊した後、わが国の生命保険業界は、歴史的な転換期にある。
バブルの崩壊による株安、趨勢的な円高、歴史的な低金利で資産運用が予定利率を下回る逆ザヤが続いている。
また、相次ぐ予定利率の引き下げ(保険料率の引き上げ)と長引く景気低迷から個人保険新契約の伸びはマイナスが続き、解約の増加から保有契約高の純増加率の低下に歯止めがかかっていない(ただし、96年度の新契約については、後述のように、若干プラスになった模様である)。
企業年金分野でも、国際的大競争時代を迎え、高齢化に伴う法定福利費を含むコスト削減を要望する企業は日本型雇用システム(終身雇用制と年功序列型賃金)を再検討するなかで、民間の企業年金制度にも受託者責任の確立、受託機関の拡大や確定拠出型制度の導入などの規制緩和を迫り、運用実績の悪化した生命保険会社からの資金の引き上げを積極化させている。
とりわけ、1996年はわが国生保業界にとって歴史的な一大転機の年であった。
4月から保険審議会を中心とする7年近い検討を経て保険制度改革がスタートし、規制緩和・自由化による競争の促進、事業の効率化と公正な事業運営を旗印に、ソルベンシー・マージン基準や区分経理などによる経営の健全性を確保する枠組みを構築しつつ、生損保の子会社形態による相互参入、保険ブローカー制度などが認められた。
そして、10月から損保の生命保険子会社11社と生保の損害保険子会社6社が営業を開始し(子会社方式によらず、提携によって相互の分野に参入したケースもある)、保険業界は新たな市場競合の時代を迎えた。
だが、保険業界を取り巻く外部環境はこれにとどまらず、さらに大きな改革への胎動の様相を呈している。
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